「南千木の家」設計の考え方

全体像

 この建物は家から本来の作り方を基本に見え方の美しさや今必要な現代の新しい技術を表現した住まいです。

美しさは当たり前で、本来の家づくりをよみがえらせることが大変でした。バブルまでの家は建物の不足を補うために新建材などの化学製品を多様化することによって家造りを短略化し供給を間に合わせる傍ら、それによって断熱性能や人に対するアレルギーを誘発してしまった時代があります。いま法律という壁をつくり、それらのしっぺ返しを本来の家づくりに戻そうという政策を行っていますが、それまでの期間に世代交代で本来の家づくりができる職人も極端に減少したのです。昔の家は小型でありますが、全てが手作りでアレルギー物質とは無縁。ただ、断熱性能は低いがために冬場は家族でコタツで団らんを楽しむがスタイルでした。

南千木の家は、無垢を多用し本来の作り方を追求しながら現代の技術を使用しコタツがなくても冬場快適に過ごせる設計事務所がとことんこだわった新しい住まいです。

外のこだわり

南側の道路から南千木の家を見てもらうと、大きな変形屋根が見えてくるのと、大きな開口の木製サッシ見えてきます。屋根の選定はガルバリウム鋼板を使い、軽やかな雰囲気にしました。瓦も魅力的ですが昨今の再生可能エネルギーを作り出す太陽光の設置や地震などの重い屋根を極力避けることが必須なのです。また、屋根の軒をどれだけ薄くし、すっきりと仕上げる所は建築家が常に試行錯誤しているところであり、積極的に採用をしました。大きな屋根にありがちな、正面から見ると大きな四角に見えてしまうところを、西面戸を斜にすることによって遠近感を出し、どこの角度から見ても奥行き感を出しています。この発想に至るまでに大きく時間を費やしています。

南側の木製サッシの高さは室内の天井高さと同じになっています。窓は全て戸袋に引き込まれ、天気の良い日は全開にすることによって、外を大きなリビングへと変化させることが可能で、窓は一つの画板であって開くことによって、庭を一体化することにより大きなリビングへと変化させることが一つの大きな空間利用と考えました。

屋根の一部には穴が空いていますが、そこにはバルコニーが存在します。本来バルコニーはデザインをする上で省くものなのですが、2階のひとつの庭とし、南千木の静かな住宅街でひと目を気にせずに上を見上げることにより満点の星を楽しめるところになっています。

西側には日差しの強い遮蔽をするための格子を入れています。水平で設置するだけでは直視をすると中が見えてしまいますので、35度の角度をつけ設置をしています。角度をつけて設置をすると角が目立つので、柔らかい雰囲気を演出するために角をとり成形をしています。玄関前と2階バルコニーに設置がされていますので是非ごらんください。


外壁は耐久性の高い素材を使用し塗素材によってイメージを作り上げています。
この南千木の家ではデザイン+ダブル断熱工法を採用しています。通常デザイン住宅にはダブル断熱工法は難しく採用されることが少なかったのですが、この壁塗り工法を採用することによってデザインを含めた断熱工事が可能になったのです。これは画期的なことで、設計事務所の家ではデザインは良いが結局性能は悪いという発想を覆したものです。ジョリパットなどの耐クラック性能より数倍の性能で地震のあとに大きなヒビが入ることはありません。

軒裏天井はすべてヒノキを採用しています。最近ではケイ酸カルシウム板という材料を使い塗装で仕上げることが多いのですが、この材料は基本水分に強いのです。しかし水分が一度はいってしまうと脆くなり最後には粉々になっていきます。外部に木材を使用することは昔から行われてきておりますが変色が懸念されることが多くあります。水に弱いと言われる木材ですが、乾燥材を使用することに水分が戻ることを比較的に抑えることができます。今回は桧を使用し「ヒノキチオール」と言う抗酸化作用に期待をしながら長持ちする家づくりを目指しています。

間取りと空間

「南千木の家」の間取りは全体を一つの空間とし、建具などを使用し仕切りをしている物です。以前の日本家屋は用途に応じて部屋を小分けする文化でしたが、これは居室内に温度差を発生します。冷たい部屋と暖かい部屋を作ることは家の寿命を極端に縮めます。湿度を含んだ暖かい空気は冷たい室内に流れ込み結露を起こします。夏場に冷たい麦茶をいれたガラスコップを置いておくとコップの周りには水滴が沢山つく現象を経験したことがあるでしょう。実は家の中でもこの現象が発生しているのです。家の窓にも出てきますし、壁や天井でも同じことが起きているのです。この水分はカビなどを呼び込み古い家屋がカビ臭くなってしまうのはこのせいです。このような家は見えないけれどカビの胞子が常に浮遊しており、知らない間に呼吸とともに体に取り入れており、家の中でも鼻炎の状態が続いたり目がかゆいなどは、カビが悪さをしていることがあります。では、これを防ぐにはどのようにするのか。部屋全体の温度差をなくし適切な換気を行うことなのです。先ほどのコップの話に戻りますが、そのコップを扇風機などの風をあてることによって結露を防ぐことができるのです。また、冷蔵庫に入れることによって温度差が極力避けられるので結露することはありません。つまりこのような環境を建物本体に作り上げることが必要になります。他社も多くなりました「全館空調」はその一環で室内の温度差をなくすことも目的の一つです。ただ、小分けにした間取りは全館空調でも限界があり、室内の温度差を誘発する廊下を極力なくし居室を全部繋げてあげることが大切なのです。昔の住まいは縁側を廊下とし部屋を全てつなげており温度差と自然換気で建物に結露を起こすことなく100年住宅が実現できたのです。南千木の家はその発想を入れ込み間取り計画をおこないました。

建物の寿命を誘発する気密・断熱・換気

よく「断熱を良くすると快適ですよ!」と言う方がいますが、一概にそうではありません。間違った使い方をすると家の寿命を極端に下げ不健康な住宅へと変わります。「南千木の家」はこの現象を徹底的に研究し健康住宅として体感できるようにしています。
断熱性能・気密性能が良くても不健康住宅と言われるの要素は?

  1. サッシの性能が極端に低い
    多くの熱が逃げるまたは冷たい空気が入ってくる場所は一番は窓です。そこに温度差が発生し暖かい空気が窓周辺へと流れ込みます。暖かい部屋でストーブを使用していると、窓際のカーテンが動いたりまたは冷たい風を感じたりとすることがあるでしょう。それは、暖かい空気が窓に逃げ込んでおり結露の原因になる証拠なのです。
  2. 第三種換気を使用する
    2003年7月1日以降に建築された住宅はシックハウス対策のための換気扇を「居室」に設けなさいと言う法律ができ、必ず換気扇をつけることが義務付けになりました。これが曲者で1時間あたりに換気扇が排出する空気が居室と呼ばれる部屋の空気を一時間あたり半分以上排出しなさいと言うものです。「居室」とはLDKや子供部屋に寝室がそれに属し、洗面化粧室やトイレなどはそれに属さないのです(対象外)。なので、家全部の換気をしているのではなく一部を換気しているのにすぎないのです。
    換気の種類には3種類存在します。
    第一種換気 吸気と排気ともども換気扇で行う
    第二種換気 吸気のみ換気扇で行い自然排気
    第三種換気 吸気は自然に給気を行い排気は機械にて行う
    ほとんどの家は(今でも)コストの安い「第三種換気」を使用しています。気密断熱の良い家にこの第三種換気を使用すると性能が半減するばかりか空気環境を悪化させます。第三種換気は部屋の途中に窓がると全体を換気しなくなるのです。隙間風のあるおうちなどは更に換気がされない現象が起きるのです。
    現象に関しては以下の動画をご覧ください。

「南千木の家」が健康住宅であり住まい寿命を延ばす理由

  • サッシの断熱性能を上げる
    サッシは樹脂を使用しています。日本で使用されている多くのサッシはアルミでその素材は部屋に外の温度を持ち込みます。樹脂サッシはその熱を入れる容量が極端に少なく外から入る熱を局極力シャットダウンし温度差を発生させない構造にしています。
  • 換気システムは第一種換気を採用し、AIでコントロールしています。
    基礎の下側から屋根裏までを第一種換気システムを採用し常に部屋の空気を管理しています。外部の温度と室内の温度に空気の湿度を管理しながら最適な空気環境にしています。常に室内の空気圧力は正圧にしており、劣悪な外部空気を隙間などからシャットダウンし管理された空気以外は入れない構造になっています。
  • 基礎内部も温度差を発生させない構造
    基礎は全てにおいて断熱をしており、コンクリートから入ってくる温度差もシャットダウンしています。これにより、基礎下の温度差をなくすことによってカビなどの発生をおさえています。
    https://youtu.be/SJNye9wXr3w


    気密断熱で1台のエアコンを使用しまんべんなく快適な空気を建物全体に回す工法
  • 湿度を吸収放出できるエアコンをリビングに設置しその空気を建物全体にまんべんなく回遊させる工法を採用しています。室内の床には温度差を発生させないためにダクトを設置し、熱交換器を通した空気を各部屋と基礎に配分しています。また、熱を効率的に使うことにより一次エネルギー消費量の削減にも貢献をしています。
  • 無垢材の蓄熱作用を使いエネルギー消費率削減をカバー
  • 無垢材は冬場に裸足であるったとしても、ヒヤリとしない蓄熱作用を持ち合わせています。よく使われているフローリングなどは、蓄熱作用どころか温度を奪う性質があります。意匠でも人気の無垢材ではありますが、このような所で省エネルギーや温度差の発生を防ぐ作用があるのです。南側の大開口サッシを無垢で仕上げたのもその一つです。
  • ダブル断熱を採用することによって家を外部の温熱環境からシャットダウン
  • 家の断熱は通常外壁から入ってきた熱を内側でシャットダウンする内部断熱が基本ですが、家を断熱材で包み外部の温熱環境からシャットダウンしています。それにより四季にあわせて室内の環境を合わせるのではなく、家の中を別の世界観として作り上げています。

「南千木の家」が目指したデザイン私は学生時代に工業デザイナーに進むか建築の世界に進むかを考えていた時代があります。モノづくりが大変すきなことは間違いなく先進的な物と古来に培った技術を統合させるということが課題でした。環境は建築技術として先端のもを採用し、デザインは材料の性質と見え方を徹底的に拘り、シンプルかつすべてにおいて機能的に考えたものです。この家には残念ながら意匠だけのために作った造形は存在しません。すべてにおいて合理的かつ機能性を美として取り入れています。その一つ一つをご紹介します。

  1. 木製の玄関引き戸ドア
    木製のドアは室内に温度を持ち込まない断熱性の高いものであり性能に貢献をしています。組み上げた縦ラインの幅広なドアは重厚感もあり、家の顔として大切な役割を持ちます。またドアの下側にはステンレスのプレートを組み込み靴が当たったとしても汚れを防ぐのと、玄関の所に埋め込んである照明がその部分を照らすことによって夜でも違った顔を見せるようにしています。
  2. 玄関から入った小型のベンチと大谷石
    玄関の土間と床の高さは180mmと上がりやすい構造になっています。ただ、下足を脱ぎ履きする上でこの寸法は人の腰に負担を強いられます。床より350mmの高さで設定し、常に腰をおろし支度ができるようにしています。その背面には大谷石をあしらいました。大谷石はゼオライトと言う物質を含んでおり、消臭効果などを持ち合わせています。見た目も美しい素材ですが、玄関などの消臭効果にも貢献します。
  3. 玄関正面から見える格子
    家を大空間で作るには見えるポイントとアイポイントをずらしたい所が分かれてきます。垂直に格子を建てるのではなく、隙間からは光を入れるけど、目線を避ける構造になっています。
  4. 玄関からシューズインクローゼットには手洗い器
    コロナ渦にて手洗いは必須となってきました、玄関前には必ずと言ってよいほど手洗い器を設置するようになりました。
  5. 玄関からシューズインクローゼットに向かう建具
    本建物は天井高が2400mmなのですが、建具もすべて2,400mmの高さにあわせてあり、通常開けておいても違和感を感じない構造にしています。
  6. 靴置場はあえてオープンに
    下駄箱はオープンとしました。これは建物の正圧換気によって履物のにおいなどが拡散しない作用があるために採用をしています。また下駄箱に入れることは、靴を忘れてしまうこともあるので、整理整頓を考慮しています。
  7. LDKの南側サッシ
    南側のサッシは2,400mmの高さで解放させると2,000mm以上の開放性があります。その先にはウッドデッキがあり、天気の良い日は解放することによって庭を一部のリビングとして見立てっています。軒先は1,400mm程の軒を出しており、夏至と冬至の太陽が入る角度を考慮しています。冬場は暖かい光を沢山入れ、夏場は遮蔽する要素を兼ね備えています。
  8. 書斎
    テレワークもそうですが、お子様がリビングで勉強をしたり、学校の用意をすることを考えています。自分の部屋でこもって勉強を行うよりリビングなどで勉強をするスタイルが何気に効率が良いとされています。またその背面には木製サッシを配置し、天気の良い日などに開放しながら自然を楽しむことを考えています。
  9. テレビ周りの考え方
    想定100インチまでのテレビが壁付けでも対応できるようにしています。現在は平均50インチが平均ですが、メディアの発達によりディスプレイの大型化は考慮すべきと考えています。TV周りを多種の装飾を加えると将来性を失うことが多く、以前ブラウン管のTV時代の方々が液晶TVを設置できない事態が発生しました。TV台に関しては、DVDプレーヤーの設置以外にオーディオ機器を配置できるようにしています。近年レコードやカセットテープを楽しむ方々急増し高級オーディオなどの設置も増えてきています。そのような機器の大型化にも配慮をしています。
  10. キャットウォーク
    家の家族には人間以外にねこちゃんやわんちゃんなどの家族も増えました。南千木の家は天井が最大4,000mm超える高さがあり、大きな梁が存在します。そこをねこちゃんなどがキャットウォークを通し、上の窓から外を眺めることを考えました。
    ねこちゃんも嬉しいですが、それを見ている住まいの住人もきっと嬉しいはずです。
    ちなみにですが、ねこちゃんのトイレは階段下を想定しています。わんちゃんは、お散歩が必要ですから玄関の横にお湯がでるシャワーの立水栓を設置しています。
  11. 造作キッチン
    色々なスタイルに合わせたキッチンを提案するために。
    今回は1,800mmテーブル一体型でキッチンの本体裏側にはブックスタンドを設置し、その空間でパソコンをしたり本を読んだりするようなスタイルを考えました。また、キッチン裏側には奥行き900mmの作業台を設置し、旦那様がそば打ちなどの作業もなんなりと熟せるような大きさを確保しています。天板はモールテックスを採用し、長年愛用できる硬度を確保するとともに、造作でしか味わえないデザインを提供しています。
  12. 肩もち階段
    階段は通常向かって右と左に支えるササラ板で固定をしますが、今回は片方だけになっています。片方だけで支えることができるの?と言うイメージを実は安全に上がれてしまうと言うギミックが、この階段の良さです。また、階段の周りは何気に室内の空気が回らないことがあります。開放的な階段にすることによって、室内の空気が留まることがない設計にしています。段板はオーク材を「なぐり」工法を使い、意匠もそうですが滑り止めにも貢献をしています。手すりは、鉄骨のフラットバーと楕円円柱を使ったスッキリしているけどしっかりとした握り感を実現しています。
    2階の手すりにはお子様の安全を考慮し、アクリル板を使用した転落防止手すりを設けているのと、下側には空気が通る「隙間」を設けています。その隙間を通ることによって2階におしあげられた基礎下の空気はその隙間を通り下に流れ込みます。
  13. 寝室の開放性と造作
    扉を3枚開けることによってリビングと一体になる構造にしています。ベッドが置かれるヘッドライニング部分には、杉板をNCの良さを生かして削り出したさざなみ風のデザインパネルをあしらっています。また、天窓をつけていますので、朝起きた時はその窓を眺めることにより、空の青さを見る楽しみがあります。
  14. 実は3LDKプラス1部屋
    2階の収納付近にもう一つ小さいお部屋が!それは展示場にご来館されたときに、皆さまに実際に見ていただきたいと思います。本当にかわいいお部屋ですよ!

この他にたくさんの見どころと語りつくせないほどの思いが詰まっています。
ぜひ展示場にご来館いただきその思いを是非味わってみてください。

株式会社 HUG DESIGN 一級建築士事務所

街角展示場は今後の住宅産業にとって皆様に良い家づくりを提案する大切な企画です